文廟門

 

文廟の庭を進むと知識への道を歩む儒学者たちが偲ばれます。かつては女性は入れないしきたりでした。  

道は「礼」から始まります。訪問者は最初の門を入る前に馬から下りるよう求めた石碑の前を通らなければなりません。たとえ国王であっても同じで、この世の権力よりも知識の方が高位にあることを示しています。

 

 

門の外には孔子とその教えの偉大さを称える4本の柱があって、これを通過しなければなりません。柱は両側に高低2本ずつ立っていますが、その高い方の柱の上部には正邪、善悪を見分ける神話上の動物リーが飾られ、善人を招き入れ、悪人を追い払っています。

 

敷地内へ入るには二層二階建て石造の大きな門、文廟門を通らなければなりません。これはレ(黎)朝後期(17から18世紀)に建造されたものとされ、以前は恐らく木造であっただろうと考えられています。 

 

門の右に竜、左に虎の浮き彫りがあります。竜は幸運のシンボルとして天へ昇っていきます。虎は強さと権力のシンボルとして、山から駆け下りてきて人間を救済します。

 

男性の精力の象徴である竜は王の象徴でもありましたが、後に竜は博士の位を、虎は学士の位を表すようになりました。竜と虎が相まみえることは大きな希望をもたらす超人の出会いを意味します。

 

入り口の左側には「聖即天也不可階而升(聖人は天と同じく梯子で昇ることはできない)」と書かれています。一方、右側には「道若路然得其門而入(原理はこの道と同じく門を知らなければ入ることはできない)」とあります。(訳者注以下、対句や漢詩に付された日本語は意訳です。)

 

二行対句 

門や扉に見られる二行対句は右から左へ、外から内へ、上から下へ読みます。これは一つの文学形式で、ベトナムの伝統教育の一部となっています。各行は同数の文字で書かれ、意味は対照的かつ補完的で、韻を踏んでいます。

 

 

即興詩

夕に散策し  世を思う

鳥が飛ぶ  その一瞬

雲が測る  高い丘  また低い丘

風が測る  しな垂れる木々  また真っ直ぐの木々

千秋が去り  千代の月を眺める

しかし月は月のまま

すべてが知られても  人心は知れぬまま

                                             グエン・チャイ ()

                                             15世紀の政治家、儒学者、詩人